「戦国BSR【※】」
・パラレル設定2

【伊真?】愛を乞う狂気

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*パラレル設定につき ワンクッション置きます

伊→→→真
筆頭が鬼畜っぽい

あと 何か色々酷い



※以下の文章はすべて、征亨の妄想の上に成り立っています
 実際のいかなる人物、団体等とも一切無関係です






「………う………く………」

 薄い障子の隙間越しに差し込む淡い月光に面を照らされ、幸佑は無意識にくぐもった呻き声を上げながら重い両の瞼を押し上げた。先刻あの男によって隅々まで散々に苛まれた四肢は、まるで全身に無数の鉛玉を撃ち込まれたかの如く重さを増し、だるいことこの上ない。それでも、小さく身動ぎする度に悲鳴を上げる躰を必死の思いで叱咤し、今し方まで陵辱の舞台であった忌わしき褥に手を突き、骨を軋ませながら何とか上体を持ち上げる。

 ―――じゃら

「!!」

 痛む下肢を僅かに引き摺った瞬間、不意に自身の足元で耳障りな金属音が鳴った。

 これは、まさか………。いや、そんな筈がな………い……

 真っ黒な九割九分の嫌な確信と、しかしどこか縋るような祈るような思いで淡く儚い一縷の望みを賭け、ぎこちない動作で振り返った視線の先に映った鈍色のそれは、漸く気力を取り戻しかけていた幸佑を再び絶望という名の奈落の底へと容赦なく叩き落とした。

「な……んだ、これは………ッ!?」

 幸佑の両足首を拘束するのは、幾重にも巻き付けられた鉄の鎖、くさり、クサリ。
 己を固く縛り上げるそれらの錠は、よくよく見れば両手首や頸にも施されているではないか。鎖の先は月明かりの届かぬ漆黒の部屋の暗がりに消え、一体どこに繋ぎ止められているのか全く判らないが、今の幸佑にはそれがまるで地獄へと続いているように見えた。

「………い……や、だ………いやだ、嫌だ、嫌だーーーーーッ!!」

 冷たく無機質な鉄鎖を伝い、手足の末梢から背を這い上がってくるどす黒い恐怖と絶望に、幸佑は最早正気を保ってなどいられなかった。自分でも気付かぬうちに引き攣り歪んだ口から絶叫を迸らせると、巻き付く鎖の僅かな間隙に手を掛け、指先が血で濡れるのも構わず半ば錯乱したようにガチャガチャと喧しい音を立てながらめちゃくちゃに引っ張る。

 だが、幾ら懸命に力を篭めても、頑丈な鎖は幸佑の指から緋色の鮮血を奪ってゆくばかりでびくともしない。普通に考えれば絶対に不可能だろうに、それでも引き千切ろうと躍起になって左右に鎖を引っ張る度に生じるギリギリと擦れるような不快な摩擦音までも、幸佑の文字通り血の滲むような努力をまるで無駄だと嘲笑っているように聞こえる。

 焦燥に、きつく唇を噛み締める。地の底から湧き上がる、己の思考を多い尽くそうとする恐怖と絶望に彩られた未来に涙すら浮かべ、幸佑は激しく戦慄した。

 外れない、外れない、外れない! 何故、何故こんなことに!?

 脳内で幾度も声を張り上げながら、幸佑は後先見ずに指示されるままに安易に拳銃を手放してしまった愚か極まりない過去の己を蹴り倒し、唾を吐き捨ててやりたい衝動に駆られると共に、深く考えもせずにこの話を受け入れた自分の判断の甘さを深く後悔した。

「くそ、くそ、くそぉッ! 嫌だ、いやだ、頼むから、早く、早く外れてくれ…ッ!」

 あの恐ろしきひとつ目の竜に気付かれる前に―――!!

 その血を吐くような悲痛な哀願の叫びは、しかし遂に叶えられることはなかった。

「――よぉ、目が覚めたか、Honey。手が血塗れだぜ。もうやめな」
「……………ッ!!」

 背後で発された低い男の声に幸佑は一瞬呼吸を忘れ、次いで喘ぐように喉を震わせた。

 ガクガクと震えながら振り向いた視線の先には、あの男――二度に渡って己を組み伏し陵辱の限りを尽くした憎くも恐ろしい奥州の若き蒼竜が、その端正な口元を至極愉しげにニイと攣り上げた不敵な表情で、腕組みをしながら悠然とこちらを見下ろしていた。

 ヒッと喉を引き攣らせ、幸佑は血に濡れた手で乱れた胸元の着物を少々慌て気味に掻き合わせながら傷口の痛みに顔を歪めつつ急いで立ち上がり、ジリジリと後退するように距離を取りながら政宗と対峙する。直視される目線に、恐怖が背筋を這い上がってくる。

「―――独眼、竜………」
「…何だ、随分水臭ぇな。昨日今日と閨を共にした仲だろ? 政宗で構わねえよ」

 明らかに含みを持って発せられた明け透けな科白に、幸佑の頭にカッと血が昇る。

 自分でも、無意識のうちに信じ込んでいたのだ。この男は、敵と云えど決して人間としての相手の尊厳を貶めるような真似だけはしまいと。思うままに権威を振り翳し、こちらの意向を無視してまで仁義に悖るような行為は絶対にしないだろうと、愚かにも頭のどこかでそう思い込んでいた。だとしたら、これ程に手酷い裏切りはない。
 …いや、そもそも最初からこのような行いをする腹積もりであったとしたら、これは最早裏切りですらない。勝手に相手を信用し、まんまと罠に嵌った幸佑自身の単なる失態だ。――何とも歯痒いことに。

 カサつく唇をきつく噛み締め、幸佑は有りっ丈の畏怖と憎悪を篭めて、眼の前に立つ男を精一杯睨み付けた。
 だが、その視線にも、政宗は隻眼を細めて口元を歪めるだけだ。

「――HA! そんな眼で睨まれたところで全然怖かねえんだよ、幸村。折角のCuteな顔が台無しだぜ?」
「黙れッ! 独眼竜よ、一体何なんだ、この鉄の枷は! さっさと外せッ!」
「Ah? 莫迦言え、誰が外すかよ。外しちまったら、アンタ、間違いなく逃げるだろ?」
「当然だッ、斯様に不当な処遇、罷り間違っても受け入れられる訳がなかろう!」

 今にも崩れ落ちそうな程に震える下肢を叱咤し、次々と湧き上がってくる恐ろしさを懸命に押し堪えつつ、それでも怯えた姿を見せまいと必死に虚勢を張って言い放った途端、政宗はスッと表情を消し、剣呑な感情に輝く鋭い眼で幸佑を射抜いた。

「……なあ、幸村。アンタはまだ、自分の立場がどんなものか判ってねえみてぇだな」

 俺が今からもう一度、骨の髄までしっかりと叩き込んでやるよ

「――――!!」

 眼を見開いた次の瞬間、咄嗟に背を向けて逃げようと図った幸佑の肩と腕を掴み、乱れた褥の上に乱暴に投げ捨てると、政宗が仰向けに転がったその躰を覆うように圧し掛かる。
 苦痛と嫌悪に呻き声を上げ、それでも尚抵抗しようと踠く四肢を力尽くで押さえ込まれ、潤いを失くして渇き切った戦慄く唇に、政宗自身の冷えたそれが押し付けられる。

「…っ!」

 悲鳴すらも奪い尽くすように長く執拗な口付けの後、顎を固定されたままひたと見下ろされる。
 吐息が掛かる程に近くにある男の整った面が、そのひとつきりの左眸に宿す、先日突き付けられたばかりの激情の焔に、幸佑は身震いすると共に愕然と青褪めた。

「アンタはもう、俺のものなんだよ」

 酷く酷薄な声音が耳朶を打ち、遅効性の毒のようにジワジワと思考を侵蝕してゆく。
 やめろ、という拒否の叫びは音にならず、ただその発声の形に唇が動くだけだ。

「武田から和議の代償として差し出されたアンタに、拒否権なんざねぇんだ」
「ッ! やぁッ! 嫌だ、やめ…ッ」

 いつの間にか下帯を解かれ、肌蹴た下肢に男の手が這うと同時に、頸を覆う鉄錠から離れた耳の裏辺りの頸筋に緩く歯を立てられ、幸佑は細かく身震いしながら背を撓らせる。
 新たに記憶に刻み付けられて久しいその動作に瞬時に蘇る不快且つ生々しい感覚と、それに次いで捻じ込まれるように襲ってくる躰の芯から裂けるような激痛を思い出し、死に物狂いで抵抗する。その都度、四肢を拘束する鎖がジャラジャラと喧しい音を立てて軋む。

 一向に止まない抵抗に痺れを切らしたのか、全力で繰り出される突きや蹴りを無理やり押さえ込むように幸佑の上に馬乗りになった政宗がチッと激しく舌打ちした。

「――Shit! おい、暴れるな、このじゃじゃ馬が。逆らっても無駄だってことが、まだ判らねェのか? 下手に抵抗しても、徒(いたずら)に生傷を増やすだけだぜ」
「…うるさいッ! こ、の……離…ぁッ!? あ、あぁッ!!」

 不意に何の前触れもなくいきなり己の前に手を掛けられ、幸佑は激しく身動ぎした。
 怒りか羞恥か、真っ赤に染まった面を多大な嫌悪と僅かの快楽に歪ませ、躰を跳ね上げる幸佑の鋭敏な反応をどこか恍惚とした表情で確かめた後、政宗は絶え間なく刺激を与え続けながら柔らかな襟足に顔を埋め、熱い吐息混じりに耳元でうっとりと囁き掛ける。

「――幸村、好きだ。気が狂いそうなくらい、俺はアンタを愛してる」

 低い声が紡ぐ熱に浮かされたような科白は、喘ぐ幸佑の耳には届かない。いや、もし仮に届いたとしても、それは幸佑にとっては忌わしき呪縛の羅列でしかなかった。これまでの如く「莫迦なことを」と呆れて苦笑する余裕など、もうどこにも残っていない。

 自分の一体何が、これ程までにこの男を駆り立て、執着させるのかが判らない。数多く存在する武田軍の一武将に過ぎないこの身に、特別に何を求めることがあるというのか。
 混迷する意識下での激しい自問の繰り返しにも、明確な答えは出ない。どころか、その問いすらも躰を這う男の手が生む感覚の渦に呑み込まれてすぐに見えなくなってしまう。

「……なぁ、幸村。いつになったら俺の想いを受け入れてくれるんだ? どうすればアンタはこの想いを本物だと信じてくれる? 教えてくれよ」

 どこか思い詰めたような、らしくもない追い詰められた獣のような熱い吐息混じりの怨嗟の囁きが耳朶を打つ。その声を聞き入れまいと、幸佑は抗うように只管頭を振り続ける。

「本当に愛してるんだ、幸村。アンタの全てが俺を狂わせる。アンタから何気なく向けられる視線や表情ひとつに、俺の思考はいとも容易く理性を放棄しちまう」
「……そ、んなこと、など……ぁッ、…知らんッ! 放せぇッ! 貴様など大嫌いだッ!」

 一切を拒絶しようと必死に頸を捩り、視線を逸らそうとする幸佑に、一瞬切なげな色を眸に覗かせた後、政宗は冷笑を浮かべながら小さく鼻を鳴らし、吐き捨てるように嗤った。

「――HA! そうかよ。……だけどなぁ、幾らアンタが俺を嫌おうと拒もうと、アンタはもうとっくに俺のもんなんだ。この事実だけは誰にも変えられねぇし、変わらねぇ」

 そうだろ、真田幸村?

 残酷なまでに優しい、まるで聞き分けのない子どもをあやし、言い聞かせるような響きに、幸佑は深い絶望に彩られた面を憤りの叫びに大きく歪めた。

 ――違う、私は陸軍将校源田幸佑だ。戦国武将真田幸村じゃない!

 決して言葉には出来ぬ禁忌の反駁は、しかし、この場合仮に伝えたとしても特に何らの抑止の意味も成さなかったろう。それ程に、この若き奥州の竜は幸佑という存在の全てを求め、まるで生涯埋まることのない無間地獄にも似た飢えと渇きからの脱却を図るかの如く、ただ我武者羅に幸佑の躰を、意思を――心を欲し、そして貪るように奪い、搾取した。

「う……ぁ、あッ! い、やだぁッ! も、や……だ、誰か、助け……あ、ぁああッ!」

 完全に血の気が失せ、カラカラに罅割れた痛々しい唇を突いて出てくるのは、嗚咽混じりの懇願と弱々しい拒絶の悲鳴だけ。それすらも、政宗の中で燻り続ける自身への激しい情欲の火種を否応なく更に燃え上がらせる要因にしかならないことに、幸佑は気付かない。
 昨日今日と、連日に亘って続け様に無理を強いられたその躰に、情け容赦のない甚振るような竜の蹂躙行為に対して抵抗し得るだけの力など、当然欠片も残ってはいなかった。

 思うがままに嬲られ、組み敷かれ続ける最悪の生き地獄の中、幸佑の脳裏に一瞬、未だ自身が誇り高き帝国陸軍軍人だった頃の懐かしき面々の姿が走馬灯のようによぎった。

 伊地知師団長閣下………橋本連隊長………百武参謀………ああ、私は、もう………。

 斯くも慕わしく高潔なる彼等に対し、自分ひとり、最早顔向け出来ぬ程に穢れてしまった現実を深く嘆き、幸佑は固く閉じた両目から悔恨の雫を頬に伝わせたのであった。
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