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「未分類」
イトーの異世界体験(仮)

其ノ一

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恥ずかしいので過去記事投稿。










 実馨が硬直したまま当惑していると、もうひとり、壮年と思しき歳の頃の白人の男が転がるように駆け込んで来た。あっという間に長身の男に詰め寄り、肩で息をしながら、掴みかからんばかりの勢いで怒鳴りつける。


『ゼ、ゼファー、お前という奴は……ッ。やたらと召喚魔法を使うなと言っただろうが!』
『異世界人を連れてくれば、仕官命令を取り下げてやると言ったのは皇太子だ。俺はその要求通り、眼についた奴を適当に喚(よ)び出しただけ。文句があるなら皇太子に言えよ』
『……ぃ、異世界人、だと?』
『ああ。ここよりも遥かに科学の発達した、別の世界の人間だ』


 壮年の男は鳶色の眼を大きく見開き、青い顔で額を押さえた。


『お前は…何ということをしてくれたんだ! 異世界の者を召喚しただって? 今すぐ元の世界に還(かえ)してやるんだっ』
『はン、そういう訳にはいかないね。こいつは、俺に下された面倒な命令を無効にする、唯一の切り札なんだ』
『…だからと言って、無関係な人間を巻き込むんじゃない! 仕官と言っても、おれに代わって師団の長を務めるだけだろうが! しかも、たった半年間だぞ!』
『半年だろうが半月だろうが、俺はそんなくだらないことに自分の時間をとられたくない』


「―― 一体何を話しているのだ」


 ぽつりと零すが、聞こえていないのか、取り合う気配はない。


『だいたい、だ。この者にも、元の世界にこの者として在(あ)るべきところがあっただろうに――それを、こちらの勝手な都合で引き離すなど、絶対にならん』
『何とでも言うがいいさ。もう決めたことだ。俺はこいつを盾に仕官の話を蹴る』


「おい、聞こえておらんのかッ」

『…さっきからやいのやいのと喧しいな。――【黙】』


 鬱陶しげに顔を顰(しか)めた長身の男が何事か唱えた途端、実馨の声が掻き消えた。


「――ッ!?」


 声を張り上げているにも関わらず、それは決して音にならない。驚愕に眼を見開き、無意識に喉を押さえた。
 男はそんな実馨の様子を一瞥し、また壮年の男との話に戻った。


『異世界の者を強引に召喚したとなると、色々と問題になるぞ。それでもいいのか』
『別に、構わないさ。暫くは俺の屋敷で預かる。責任持って面倒見るから、安心しろよ』
『はあ…。この者には気の毒だが、仕方ないな』


 諦めたような溜息。両者の間で話がついたらしい。
 …会話の内容はさっぱりだが。


『――どうやら、我々の言葉が判っていないようだな』
『ま、当然だろ。なァに、すぐ話ができるようにしてやるさ』


 我の強そうな碧眼がこちらを向く。
 徐(おもむろ)に手の平を翳(かざ)され、実馨は思わず小銃の銃口を向ける。


『【縛】』

「っ」


 何だ、これは。――躰(からだ)が、動かん。


 全身が石の如く硬直し、引き金に指をかけたまま静止する。
 男は更に理解不能な単語を羅列し、言い終わると額にぴたりと人差し指の先を押し当ててきた。途端に、触れた箇所から焼き付けられたような感覚が奔(はし)り、実馨は眉を曲げた。


「――これで俺たちの言葉が判るだろ。《緘黙》も解いてやるから、ちょっと待て」
「…!?」


 いきなり、相手の言葉が慣れ親しんだ母語に変わった。
 瞠目している内に、再び男が短く唱える。すると今度は声が出るようになり、不可解な全身の強張りもなくなった。
 実馨はまた何か妙なことをされるのでは、という警戒から若干後退りつつ、照準を定めた銃口はそのままに奇妙な男たちを鋭く睥睨する。


「――此処は一体どこだ。貴様らは何者だ。返答如何によっては容赦せんぞ」
「…もう少し黙らせておいた方が良かったか?」
「やめろ、ゼファー。我々には、この者に対してきちんと事情を説明してやらなければならない責任がある」
「チッ。なら、アンタが説明してやれよ。俺はごめんだね、そんな面倒なこと」


 不機嫌そうに舌打ちしてそっぽを向く。
 つくづく無責任なやつだ――と、壮年の男が疲れたように息を吐いた。


「さて、何から説明すればいいか…。そうだな――まず、君が今いる場所について。ここはアズガルド王国の首都リンディニウムだ」
「…聞かぬ名だが」
「あぁ、まあ、それはそうだろう。君から見れば、ここは異世界になるからね」
「――は?」


 い せ か い ?


「――貴様ら、本官を愚弄するか」
「信じられないのも無理はない」


 殺気さえ放つ実馨に、壮年の男は今一度溜息を吐いた。と、懐から一冊の分厚い書籍を取り出し、中から折りたたまれた一枚の紙を手に取る。彼は床に膝を突いてそれを広げてみせた。それは、見たこともない地形や道路が描かれた地図だった。
 思わず眼を疑う実馨の前で、解説に沿って男の武骨な指先が紙面を滑(すべ)る。


「ここがリンディニウムの中央市街。そして、この大通りをまっすぐたどっていくと……その先にあるのが王城だ。その名の通り国王の住居で、魔法大国アズガルドの象徴とも言える」
「…まほう?」


 初耳の単語に頸を傾げると、莫迦にしたような声が割り入ってきた。


「あ? 何だ、お前、魔法を知らないのか。魔法っていうのは、魔の力を秘めた古の秘語によってあらゆる物質を自在に操り、万物の構築と破壊を司る、魔道呪術の最終形態だ。さっきお前の動きを封じたり、声を奪ったりしたのも、全部この魔法でやったんだ」


 得意げに語られるが、科学的根拠に欠ける返答に理解は遠のくばかりだ。
 胡散臭いものでも見るような眼つきでいると、心底呆れた表情を浮かべて見下ろされる。


「はぁ…ここまで説明してやっても理解できないとか、お前バカなのか?」
「――ぁあ? 聞き捨てならんことを言いおったな、貴様。そこに直れ、成敗してくれる」
「あー待て待て待て! とりあえず二人とも落ち着け!」


 壮年の男の必死の仲裁で、一触即発の事態は免れた。
 ――が、現状を受け入れるにはほとほと程遠い。


「それにしたって、お前さぁ。言うに事欠いて貴様はないだろ、貴様は。俺にはゼファー=ラウエルって立派な名前があるんだよ」
「それはこちらの科白だ。お前、などと、人を莫迦にした呼び方をしおって。私にも伊藤実馨という名があるのだ」
「…イトーマ…キョ?」
「違う。実馨。まきよ、だ」
「マ・キョ?」
「区切るな。後、何故『よ』を小文字にする。実馨だ、実馨」
「マ、キ…ヨ」
「間を空けるな。ひと息で言え」
「…あーもーめんどくせっ! 言いにくいんだよお前の名前ッ。もうイトーでいいだろ!」
「勝手にしろ」
「あぁぁ、喧嘩はいかんぞ、喧嘩は……。
 …イトー、おれはダイス=ロキシン。一応、ゼファーの師に当たる人間なんだが…」


 言いながら、恨みがましげにゼファーを横目に見る。師と言う割に、少しも敬われていないらしいことは、これまでの短い遣り取りからも容易に察しがつく。長じて、あまり頼りにはならなさそうだ。


「イトー、不本意だろうが、君はこれからゼファーの屋敷で世話になるんだ。この男は無駄に金持ちだからな、生活に困ることはないぞ。それだけは安心していい」
「何となく引っ掛かる説明だけどな……『無駄に金持ち』って点を除けば、大方その通りだ。お前が俺の屋敷の使用人になることは既に決定事項なんだよ。反論は認めない。それに、今の段階じゃあ、当分の間、お前は自分の世界には還れねえよ」
「……は?」
「俺は、秘術とも称される召喚魔法でお前を別の世界から喚び寄せた。どうしても還りたいなら、もう一度それを発動させるしかない。でも、一回の魔力の消費量が膨大な上に術の再構築まで最低でも一年はかかるから、それまではどう足掻(あが)いても戻れないと考えろ。そもそも、俺の仕官命令取り消しが決定するまで、俺にお前を還すつもりはないけどな。…ああ、勿論賃金は弾んでやるぞ。その代わり、しっかり仕えろよ」


 …誰かの言葉の意味を理解するのに、これほど時間がかかったことはなかった。


「――……勝手なことを……貴様! 誰が、誰を使用人にすると!? 私が大人しく従うとでも思ってかッ! しかも、一年も戻れんだと!? ふざけるのも大概にしろ!!」
「はぁ? そんなこと、俺の知ったこっちゃないっての」


 さも迷惑そうに言い捨てるゼファーに愕然と息を呑むしかない。
 額に血管を浮き上がらせ、わなわなと身震いしていると、ダイスがげんなりと肩を落としながら気の毒そうな視線を寄越してくる。


「……こんな男なんだ。イトー、本当に済まないが、この際運が悪かったと諦めて、一年だけ我慢してくれないか? 一年経ったら、必ず君を元の世界に還させると約束するから」


 見事な巨躯を小さくして平身低頭する師をちらと一瞥し、ゼファーはいかにも尊大といった態(てい)で口を開く。


「第一、あの我儘皇太子が『城に仕官するのが嫌なら、代わりに異世界人を見せてみろ』なんてばかげたことを言わなけりゃ、俺もこんな面倒なことはしなかったんだがな」
「だが殿下も、まさかお前が埃を被った八百年も前の魔導書を引っ張り出してまで人間の召喚魔法を習得して、本当に異世界人を喚び出すなどとは思っておられなかっただろうに」
「だからこそ、だ。無理難題を言って仕官させようって魂胆だったんだろうが――ふん、その手は喰うか。逆手に取って突っ返してやる」
「まったく、我が弟子ながらとんでもないやつだな…」


 師弟の口論は、渦巻く思考に憑(と)りつかれた実馨の耳には入らない。


 ここは自分が生きていた世界とは異なる別の世界で、現在眼の前にいる男、ゼファーの駆使する科学では説明のつかない不可思議な力――魔法、というものらしい――によって、今回強引にこちら側の世界に引き摺(ず)り込まれたのだという。
 ゼファーの目的は、皇太子から自身に課された仕官命令を撤回させること。
 そして、実馨が再び元居た世界に戻るには、少なくとも使い切ったゼファーの力が回復する一年後まで待たなければならない――。


「ここじゃお前は天涯孤独の身だ。俺だって本当はお前みたいな奴を屋敷に入れたくないんだが、宿無し無一文で放り出すってのもあんまりかわいそうだからな。仕方ないから、引き取って面倒みてやる。どうだ、ありがたいだろ? 俺の恩情に感謝しろよ、イトー」


 何が、恩情だ。
 詭弁を弄し、さも恩着せがましく己の行いを正当化するその図々しさに、正気を疑う。


 一体誰のせいでこんなことになったと思っているんだこいつは――!


 ぴきり、額に更にくっきりと青筋が浮かぶ。
 湧き上がる憤怒に任せ、実馨は碧(みどり)の眼をきつく睨み据え、眼にも止まらぬ速さで床を蹴り上げた。次の瞬間、硬い軍靴の爪先が渾身の力でゼファーの鳩尾(みぞおち)にめり込んだのは言うまでもないことだった。
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