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「★狂気の贄」
第二章 花と贄

狂気の贄 12

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12 無言の要求




 山桜に似た薄桃色の花がちらほらと咲き始めた花曇りの日。
 修記郎は青年と二人、自前の魚籠と竿を手に獣道を下り、沢に出て川魚を釣っていた。

 魚は貴重な蛋白源だ。一匹でも多く釣ることができれば、それに越したことはない。
 一度に食べ切れないなら、開いて内臓を取り除き、天日に干して保存食にすればいい。

 途中で軽い昼食を挟み、少し離れた場所に陣取った青年からの語りかけに二言三言と返しながら、川面かわもにじっと釣り糸を垂らし続ける。




 粘った結果、互いにまずまずの釣果を得た。
 しかし、半日近く雪解け水の流れる川べりの岩場に腰をおろしていたせいか、修記郎の右足は冷えて痛みを訴え始めていた。

 眉宇をひそめて歪曲部をさすっていると、ふと、先ほどまで魚で埋まった魚籠をかかげてはしゃいでいた声が消えていることに気づく。
 何気なく顔をあげれば、男らしい美貌を気遣わしげに歪めた青年が、すぐ傍らに立ち尽くして修記郎を見つめていた。

 まったく気配を察せられなかった修記郎は、その想定外の距離の近さに驚く。


「…何だ」
「足、痛むんだろ? おれが小屋まで抱えて行ってやるよ」


 そう言って、鍛えられた腕を広げて修記郎の前にかがむ。
 横抱きで運んでやる、ということなのだろう。

 修記郎は即座に眉根を寄せて首を振った。


「いい。暫く待てば、自力で歩けるようになるだろう」
「無理をしたら、余計に痛むんじゃないのか」
「わたしのことは気にせずともいい。何なら先に戻っていてくれても構わん」
「おれひとりだけ、小屋に帰れって言うのか? ヨシを置いて? 冗談じゃない」


 今にも掴みかからんばかりに語気荒く詰め寄られ、修記郎は諦めに小さく息を吐いた。


「…では、おぶってくれ」
「おぶ…? 何だ、それ。どうやるんだ」
「まず、わたしが後ろからこうやって首に腕をまわすから、そちらは両わきでわたしの足を抱えて、そのまま身体を持ち上げてくれ」


 いぶかる長身を反転させ、後ろ向きに膝を突くその背中に身体を預ける。
 しっかりと両腕を太い首に回し、足の持ち方や体重の支え方やを口頭で簡単に教えた。


「えぇと…これでいいのか?」
「ああ。悪いが、頼む」
「いいさ、このくらい。残った荷物は、おれがまた後でここまで取りに来るから」
「…済まない」


 耳元で詫びた途端、むっと拗ねるように青年の唇が尖り、白皙の頬が膨らんだ。


「――あぁもうヨシは。一体いつまで他人行儀を貫く気だよ。淋しいじゃないか。
 いいか? こういう場合は、謝るんじゃなくて礼を言うんだ」
「礼を、言う?」
「そう。ほら、言ってみて。おれも、何べんも謝られるよりそっちのほうが気持ちがいい」
「…」


 予期せぬ要求に、修記郎は困惑顔で幾度か言いよどみ、それでも最終的にはぎこちなく声を絞り出した。


「……あ…り、がとう」
「どういたしまして」


 青年は満足げににっこり笑うとゆっくり立ち上がり、川原を離れて獣道へと歩き始める。
 背におぶった修記郎に配慮してか、決して歩きやすい道ではないにも関わらず、不快になるほどの揺れは殆どない。


 ざく、ざく


 雑草や大小の小石で荒れた足場を踏み鳴らす、なめしたかわの靴音が響く。


「こんなことしたの、初めてだなぁ」


 ぽつり、青年が呟いた。

 まずかったかもしれない――と、青年の広い背にすがり、その歩調に合わせてゆらゆらと揺られながら、ほんの僅かな後悔が今更ながら修記郎の胸中に到来する。

 おんぶの文化は祖国特有のもの。欧米をはじめとする列強諸国はむろんのこと、世界をことにするこの国には決してないものだ。つい失念していた。
 かと言って、余計な言い訳をすれば更にボロが出る危険性もある。

 修記郎は何も言わず口をつぐみ、青年の首に回した腕にほんの少しだけ力をこめた。
 途端、青年の肩が震えた。振動で、頬に当たる柔らかな黄金きんの髪もさらりと揺れる。


「…ははっ」
「…? …何を笑うことがある」
「いや。楽しいな、と思ってな」

「は?」

「おれは今、こうやってヨシと一緒にいて、とても楽しい。――ヨシは?」
「……これが楽しんでいる人間の声色だと思うか」
「うーん…思わない」


 くすくすと笑い声をこぼしながら答えてくる。
 それが何とも耳に心地よく、修記郎は残りの道のりの間、ただただ緘黙を貫いた。
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~ Comment ~

野津さま

こんにちは。またまた美青年の登場で この世界に入って見たくなりました♪

執筆活動も順調で良かったって思います♪

コメント嬉しいです

クロエ様


こんばんは。
読んでくださって、本当にありがとうございます…!
おかげさまで、何とか駄文投稿を続けることができています。
クロエ様も素敵な言の葉を次々に生み出しておられるご様子で、なによりです♪
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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