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「★狂気の贄」
第二章 花と贄

狂気の贄 05

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05 逃れることなど叶わず




 かつて自身が王城にとどまっていた期間を、修記郎は正確に憶えていない。
 ひと月ほど過ごしたかもしれないし、ほんの三、四日だったかもしれない。

 とにかく、どこにも身の置き所がなかった。
 望みの巫女ではないとされた修記郎は、王城の者たちの視界から即刻排除されたから。

 代わりに巫女として傅かれ、もてはやされたのは、修記郎と同じくあちらの世界からこちらの世界に呼び寄せられた、もうひとりの別の人間。
 混乱から醒められず、茫然とする修記郎を差し置き、状況を把握するなりいち早く自らを売りこんだ自称『恩恵の巫女』は、なかなかどうしてしたたかに王城でよろしくやっていたらしい。

 ――王命の下、修記郎を本物の『恩恵の巫女』と認識した騎士団が全土で動きまわっている今、結果的に偽物という立場に置かれた彼女がどうなったのかは定かでないが。








 村を離れて三日目の夜。
 追手と遭遇することもなく、深い闇の広がる山中に潜りこんだ修記郎は、嘗て樵だか誰だかが使っていたらしい無人の丸木小屋を見つけた。
 中の安全を確認してから埃っぽい床に一旦荷物を降ろし、辛うじて形を保っている崩れかけた竈の前に腰をおろすと、隙間から差しこむ月明かりを頼りに乾いた小枝を組み合わせ、火打石で火をつける。

 そこでふと脳裏によぎったのが、『恩恵の巫女』を名乗る彼女のことだった。
 彼女、と表記する理由は至極単純、名前を知らないからだ。
 向こうも、修記郎の名など知りはすまい。

 それもそのはず、何せ、以前はともに同じ世界の同じ国に生きていながら元々会ったこともない赤の他人同士であったし、こちらの世界に引きずりこまれてからも言葉を交わしたことはおろか、互いに真正面から向かい合って眼を合わせたことすらなかったのだから。


(魍魎どもの巣で、今頃どうしているのやら)


 パチパチと爆ぜる火に時折新しい小枝をくべながら、修記郎の意識は最早顔の造形すら思い出せない同郷の人物の回想に忙しくなる。





「――へぇ、そういうことかい。なら…自分で言うのもおかしな話だけど、さ。おたくらがお望みの巫女ってのは、きっとわっちのことさね。そっちのお方は……ふふ、人違いさ」


 ――王城の連中から、一連の事情をかいつまんで聞かされた後。
 彼女は艶冶に微笑んで、得意げな、勝ち誇った気色を含んだ視線を横目に流してきた。

 現状を受け入れられず、ただ立ち尽くすばかりの修記郎を無視して話はとんとん拍子に進み、気づけば彼女は大勢の人間に伴われてその場を去っていた。
 このかん、修記郎は肯定も反駁も何ひとつ発せずに、佇立していることしかできなかった。

 その後、王城を出るまでに体験した屈辱的な出来事は――考えたくもない。





(――いかん)


 修記郎は鈍い痛みを訴え、ガチガチと震え始めた右足を宥めるように撫でた。
 次いで、ゆるくかぶりを振り、黒く染まりかけた意識を無理やり引き戻す。





 彼女のことだが――あの独特の話し方に、随所に至るまで女らしい優美さを追求した婀娜な仕草。
 何より、実用性を度外視した贅を尽くした身なりと、綺麗に施された化粧から、吉原だか湯島あたりの、いわゆる花街と称される場に籍を置く遊女だろうとは容易に想像がついた。

 ――権力というものは、往々にして男の手に握られることが多い。
 世界は違えど、同じ人間という生き物が社会を形成している以上、政治的な権勢分布もさして大差はないはず。

 かの遊女はそれを肌と本能で理解し、持ち前の手練手管を駆使して、召喚の場に居合わせたこちらの政界の重鎮たちに言葉巧みに取り入り、悠々と身の安全と生活の保障とを手に入れた。
 対して、状況に理解を示さず、また、生来の一本気な気質と帝国軍人としての矜持ゆえに一切媚びることをしなかった修記郎は、数分と経たぬうちに用なしの烙印を押され、保護の枠からはじき出された。

 要約すれば、両者の違いはそれだけだった。
 そして、その違いゆえに、両者の間に天と地ほどの対応の差が生じた。





 そもそも、見るからに流麗な着流しの美しい女と、かっちりとした武骨な軍服姿だった自分とでは、どちらがより巫女らしく見えるかと言われれば、間違いなく前者だろう。

 ――ただ、その当時も今も相変わらず、自分と彼女、どちらが連中にとって本物の『恩恵の巫女』だろうと、修記郎にはどうでもいいことだ。
 修記郎の尊厳を踏みにじり、追い落とした王城の者どもも、同じ境遇の修記郎を蹴落とし、自ら魑魅魍魎の巣窟に飛びこんだかの遊女も、どうなろうと知ったことではない。

 無論、何の悪感情もないわけではない。
 しかし、正直なところ、怨み、憎むことにも、いい加減疲れた。

 恐らくこの先、その凝り固まった負の感情がなくなることはないだろうが、彼らと二度と関わらずにすむのならそれでいい。それさえ叶うのならば充分だ。それ以上は望まない――

 ……と、何度願ったか知れない望みは、つい先日破れたばかりで。
 修記郎自身も、本当の意味で逃れることはできないのだろうと――正気のうちでは、到底認められないものではあったが――頭の中の無意識の領域で悟っていた。


「…今日は、もう寝てしまおう」


 幸いこの山に、人を襲うような獰猛な肉食獣の気配はない。
 手を突いて緩慢に立ち上がった修記郎は、健脚を維持している左足で踏みつけるように火をもみ消すと、村の家から持ってきた、使い古した大きめの麻の布地を床に広げてその上にゴロリと横になった。

 ゴツゴツとした床のせいか、はたまた纏わりついて離れない不安のせいか、赤く燻る燠火のように頭の芯が冴えて、なかなか寝つくことができなかった。





作中に出てくる表現は、あくまで修記郎個人の考え方としての描写となります。
その点、誤解のないよう、お願いいたします。
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